2000/12/5号
ペイオフ対策なし!
中小金融機関に預金分散の恐怖
 二〇〇二年四月のペイオフ解禁まであと一年三ヶ月余り。省庁再編で次期金融担当相に就任した柳沢伯夫氏は、過日の就任記者会見で「ペイオフの再延期はあり得ない」と断言している。しかしながら、一般に経営弱体の信組をはじめ第二地銀(旧相銀)並びに首都圏所在の一部中小都市型信金の中には、「今この不景気のドン底状態のときにペイオフが実施されれば、壊滅的打撃は必至」として、ペイオフの全面中止か、または何らかの抜本的施策が必要とする悲痛な声も上がっている。特に創業以来、営業基盤の弱い旧相銀の第二地銀や、戦後長らく都道府県の金融行政素人集団の監督下にあって、ここ数年来、いきなり厳しい国家監督に委譲されて、他の先進金融機関同様の経理基準や自己資本比率未達を指摘されている信用組合等は、一層、危機感を募らせている。次に現状を取材した。

破綻大臣≠フ柳澤氏復活
早速、関西興銀、東京商銀を処刑
 森内閣は、十二月五日、内閣改造を実施し、来年一月六日、金融再生委が統合して新発足する新生金融庁の担当大臣に、初代の金融再生委委員長の柳澤伯夫氏を任命した。同氏は、歴代五人の再生委委員長の中で唯一、銀行の破綻を実施させているが、就任して早速、十二月十六日に、関西興銀と東京商銀の破綻を宣告した。
 なお、金融庁長官には、再生委発足時から事務方のトップとして金融機関再編の実務に当たってきた森 昭治再生委事務局長が内定した。

京都中央、日本一信金へ

 【京都】京都中央信金では、来年一月四日の京都みやこ、南京都二信金の事業譲受のため、債権分類作業を行ってきたが、このほど整理作業が終わり、継承債権、店舗、職員採用の大筋が固まった。今回の事業譲受では、できる限り地元経済に配慮しての「血のある」債権譲受が行われるようである。

50周年記念パーティ静かに
「主役は信金」−しんきん中金
 信金中央金庫では、十一月二十一日、第五十九回臨時総会を開き、VC子会社設立等に伴う定款の一部変更を行うとともに、総会終了後、創立五十周年記念パーティーを催し、五十年の感謝を内外に示した。
 パーティーには会員信金、全銀協、地銀協、生・損保など金融業界各界のトップが参集し、西川善文全銀協会長、岸 暁前全銀協会長、速見 優日銀総裁、澄田 智元日銀総裁、越智通雄元再生委委員長ら錚々たる顔ぶれが見られ、約一千七百名の関係者で会場のホテルニューオータニ芙蓉の間はぎっしり埋まった。
 宮本保孝信金中央金庫理事長は、今回、壇上に上がっての挨拶は行わず、加藤敬吉信金中央金庫会長と共に入り口で来客を歓迎の挨拶で出迎えたのみ。あくまで信金中央金庫の五十周年の歴史の「脇役」を務める奥ゆかしさが見られた。
 パーティーに先立っての臨時総会でも、「信金中央金庫の主役は信用金庫」との立場を明確にした。  全信連が創立五十周年を機に信金中金に名称変更したことについて、「農中と同じになるのでは…」と一部信金から不安の声も出たが、今回、定款にしんきん中金の「目的」を盛り込み、しんきん中金は信用金庫の中央金融機関として信用金庫業界の健全な発展に資するためにある、という位置付けを明確化した。
 他、総会では、新規業務として保険募集、確定拠出年金(401k)を加えるとともに、ベンチャーキャピタル会社の創設(保有)を行うことを決めた。
 ベンチャーキャピタル会社は、名称=しんきんキャピタル株式会社。資本金四九〇百万円をしんきん中金が全額出資し、VC(ベンチャーキャピタル業務)とM&A(企業買収等の仲介業務)業務を行う。現在、ベンチャー企業投資として、「投資事業組合」を設立する方式が日本でも盛んになってきており、しんきん中金や各信金が投資事業組合に出資参加しているが、しんきん中金が主体となってVC業務に力を入れるため、子会社設立となった。
 なお、松江支店の廃止及び広島支店を中国支店に名称変更した。

しんきんATMゼロネットサービス始まる
わかりづらいCM、PR不足も
 十二月四日から、全国三七九信金のCD、ATMでの相互ネット手数料が無料になる、「しんきんATMゼロネットサービス」が始まった。全国で約一万九千台を誇る信金のネットワークの価値を最大限に生かした、信金業界「持ち出し」のサービスだが、まだやや「PR不足」の感もある。
 今回のゼロネットサービス開始にあたっては、全信協が提供の「関口宏のサンデーモーニング」で十二月〜二月までCMを流すほか、十二月一日から全国三十五のテレビ局でスポットCMを流しているが、「スタートの一ヶ月位前からやってくれないと、効果は薄いよ」と、某信金。スポットCMは一週間だけだったということでの不満の声なのだが、全信協の方は、「予算」の関係もあって、PRを絞り込んだ様子。新聞広告も、地方紙(全国四十七都道府県)のみとし、全国版は今回なし。
「しかもCMがわかりにくい。無料≠ニいうのは本当にインパクトがあることなのに、それが全然伝わらない」「ペイオフを前に、このサービスは顧客囲い込み対策にもなるのに」等の苦言も。
 だが、金庫側がみなそれだけの高い関心を持っているというわけでもなさそう。今回、全信協ではポスター、ATMに貼るシール、スウィングポップの販促品を十一月末までに全金庫に無料で配布したが、都内ではポスターやシールを貼っていない金庫が結構ある。東信協が全国信金に共同調製したチラシは置いてある所が多いようだが、これだけではPR効果は乏しいと見られる。
 一方、岐阜信金(理事長・音瀬晴夫氏)では、ゼロネットサービスのスタートに合わせて、十二月四日に東京フィルのチャリティーコンサートを千六百名規模で開催したほか、「しんきんゼロネット、記念定期預金」(金利優遇)の発売、普通預金口座開設、給与振込・年金受取、マイカー・マイホームローンのキャンペーン(雑貨のプレゼント)を実施。
 京都信金(理事長・井上達也氏)では、同じく十二月四日から、郵貯ATMで同金庫の普通預金を出金した際の利用手数料をキャシュバックする「京信“ユー”サービス」を開始し、「顧客アピールの良い機会」として最大限活用している所もあり、金庫の対応はまちまちのようだ。

北九州八幡、若松合併へ
5金庫大同合併に発展?
 【福岡】北九州八幡信金(理事長・古川育史氏 預金量二二五五億円)と若松信用金庫(理事長・堀 紀雄氏 預金量九八一億円)では、来秋合併することで合意し、さる十二月六日発表した。
 ビッグバン時代への生き残りを図るもので、今回の合併により、預金量は合わせて三千二百億円、店舗数は三十九ヵ店、役職員数五百四十名、営業エリアは北九州市西部(北九州八幡信金)・北部(若松信金)を包括することになる。
 福岡には小型信金を中心に十四の信金がひしめいており、早くから、預金量二千二百億円の北九州八幡信金を「核」として、近隣の若松、新北九州、門司、築上信金(いずれも預金量一千億円未満)が大同合併する構想が言われていた。今回の合併により、この実現に弾みがつくのではと見られている。
 なお、今回の合併は対等合併とし、新金庫の名称は新たに定める。新金庫の理事長には古川育史北九州八幡信金理事長が就き、副理事長には、堀 紀雄若松信金理事長。本店は北九州八幡信金本店に置く。

朝日、上期で貸出四百八十億円増に


中南信金、中原支店オープン


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●総合職全員をFPに!−三浦藤沢信金
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