1998/6/15号
東信協「危機管理」執行部が発足!
東信協では6月15日、通常総会で、第16代会長に朝日信金・長野幸彦会長を選任。 副に、西京・茂木理事長、王子・大前理事長、亀有・矢澤理事長を決めた。
なお工学部出身の理事長が副会長に就任するのは矢澤理事長が初めて。
新執行部は本格的な金融ビッグバン時代の都市型信金のあり方や電子マネー等 先端分野への対応など、「危機管理体制」として東信協が直面している諸課題に取り組む。
なお去就が注目された山下専務(理事在職18年)は勇退。一気に若返り、新時代に対応した事務局となった。

自己査定による不良債権のあいまいさ
 今回のディスクロージャー誌より、信金も従来の破綻先に加え、延滞先、金利減免先、経営支援先まで−と、銀行並みの不良債権開示をすることになる。
 こうした中、城南信用金庫では、平成十年版ディスクロージャー誌で、自己査定に基づき、債権をT〜W分類まですべて公開し、注目を集めた。
 同金庫でも「分類債権額や貸出先数を公表するのは、世界でも城南信金が初めて」「経営内容に自信があるから公開できる」とPRにやっきだ。
一部銀行でも自己査定による債権分類の開示を取り入れ始めた。
 ところが、金融関係者から、この開示方法に疑問の声が上がっている…。

 本来、ディスクロ誌には「グロス」の数字を出さねばならない

統一開示基準では、ディスクロージャー誌に記載する不良債権は、「グロス」の数字である。例えば「延滞先債権」と言う場合には、融資先が支払いを先延ばしにしている利息分だけでなく、元本、利息すべてひっくるめた全体の数字を指す。また、その大部分が担保や保証で保全されているとしても、その分をあらかじめ勝手に差し引いてはならない。あくまでまず最初に「グロス」の数字を出さねばならないのである。(しかる後に担保等を差し引いた数字を併記することはできる)

 自己査定では担保、保証付部分が救われる

 ならば自己査定でも正常先=T分類、要注意先=U分類、破綻懸念先・実質破綻先=V分類、破綻先=W分類か―というと、さにあらず。
 自己査定では、破綻先であってもイコールW分類ではない。担保や保証のある部分は、T〜V分類に繰り上がるのだ。
 破綻先の場合、W分類となるのは担保・保証なしの部分だけ。一般担保・保証のあるものはUかV分類。優良担保で保全されている部分などは堂々、「T分類」になってしまう。
 言わば、「ネット」の数字になるのだ。
 つまり一般の金融機関がディスクロ誌で開示する各債権と、自己査定の「T〜W分類」では、意味が違うのである。
 多くの金庫では、「グロス」の数字を示した後に、担保や保証を差引き、「実質的な不良債権はいくらです」等と表示するが、自己査定による問題債権は、どちらかというとこの「差引き後」の数字に近い。

 しかし、違いに気付く人は少ない

 しかし、一般顧客がこの差に気付くのは難しい上、週刊誌やランキング本が、他の金融機関の開示基準と一律に捉えてランキングをつけてしまう可能性もある。
「ディスクロで統一開示基準が設けられているからこそ、顧客は各信金を比べて、選択することができる。統一基準を無視して、自金庫に有利な基準でのみ開示するのは、フェアでないのではないか」との声が上がっている。


自己査定による貸出金の分類査定基準

貸出先区分優良担保・保証あり一般担保・保証あり担保・保証なし
正常先TTT
要注意先TT、UT、U
破綻懸念先TU、VV
実質破綻先TU、VW
破綻先TU、VW
 

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