<記者メモ>
9月25日号
「米国金融の実態を見た」

信頼度低い「米銀」?

「いやあ、ビックリしたね。これだけ日本に金融ビッグバンだ、グローバルスタンダードだのいっているから、さぞかしアメリカの銀行は信用度があるに違いないと思ったんだがねえ」
 金融視察団でアメリカにいった知り合いから帰国後、アメリカ金融の実態を聞いてみた。
「ところが、銀行の社会的地位が日本以上に低い。下手すると普通の企業以下じゃないかな。で、銀行の目的というのも、株主のために利益を上げることで、銀行にお金を預けてくれる預金者のためじゃない。むしろ自行の1株あたりの利益がどれだけあがっているのかが、最大の基準であって最大に優遇しなければならないのは、株主でしかない。
 全部が合併して巨大銀行ばかりかというと、そうではない。都市部でも三〇〇〇億円規模の銀行でやっていける。ただ預金の新商品など無く、単に利率と預入額、それに期間設定だけ。この出来如何が究極のサービスというわけ。融資だって個人の住宅ローンが中心で、もちろん企業金融などはやらない。だからビジネスライクで、集金訪問・融資提案などあろうはずなく、お客は『高い金利で預かってやるのだから、預けに来い』という考え。
 反面、相対的に高いのが証券会社。メルリリンチやソロモンブラザースなどは超一流の企業で、ステータスも高い。だから法人はもちろん個人も年金や財テクのために投信など証券が資産形成の基本となっている。
 これじゃあ、誰もちまちま銀行で定期預金などしたがらない。強い胴元、儲けさせてくれるカジノのディーラーを求めているようなもの。格付け会社は、その胴元のランク付けのようなもんだ。
 だからアメリカの銀行が、低コスト預金が山のようにある日本市場に出たがるのも無理はない。
 それにしても金利だけの預金者、株主だけの銀行。何だか日本の金融ビッグバンの行く末を見た思いだったね」
「もっとも今の日本版ビッグバンは、ディスクローズだの破綻債権開示だの、アメリカの銀行が高い評価に見える「会計ビッグバン」だよ。
 どれだけ資産運用で、株価あたりの利益を出しているかでみれば、日本の銀行など霞んでしまう。企業金融などせずに住宅ローンばかりじゃ、当然自己資本高いの当たり前だ。こんなアメリカだけ有利なご都合主義ビッグバンやってたら、とんでもないことになる。もっと金融機関のシステム変革や管理制度を含めたビッグバンー根本的な見直しをしなけりゃ無意味だよ。
 実際、日本の信用金庫システムと、アメリカのビジネスライクの銀行じゃ、水と油。相容れない制度だね。
市場に頼らず、きちんと企業金融できるのは、信用金庫しかない。今回アメリカの現状を見たら、ますます「協同組織金融機関」としての使命の自覚が必要だと確信したよ。
 そうでなきゃ、信用金庫としての存在意義がなくなってしまう」
 企業を育て、預金者ばかりでなく地域も活性させる「協同組織金融機関としての信金」をどうアピールしていけるのか。根本にして最大の課題である。(S)



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