<記者メモ>
6月5日号
「引き際の難しさ」
三十年間インドネシアそして発展著しいアセアン諸国を代表する顔として君臨してきたスハルト大統領が、その地位 を追われた。
故スカルノ将軍をクーデターで追い出し、爾来三十年間インドネシアを 発展途上国から新進工業国として発展させてきた中興の祖も、 今では最高権力をカサに私腹を肥やした犯罪者として国民から総スカン。
金融機関でも、ここ数年様々な不祥事や疑惑等で、その業績を汚してしまったトップ経営者が多く出た。
こういった例は、洋の東西を問わず古今様々なところで繰り返されてきたことだ。どんな高潔な人でも長年権力の座 に留まるとその魔力に、地位を離したくなくなるのかもしれない。
必ずしも長くやるのが悪いというのではない。
信用金庫業界で見ても、業界百兆円の盤石な礎を築いた故小原鐵五郎 全信協会長をはじめ、長期政権を執りつつも盤石なけ経営基盤を築き、社会的信頼を上げた人は多い。
しかしながら、金融ビッグバンという事態を迎えながら、業界の要職 を歴任しつつも未だ権力と趣味と収入にこだわりつづけ、金庫や引き受けているところの経営が問題になっても、 自分のせいではないと責任回避し、批判分子の首のすげ替え で事足りるとするトップや、自分のところの経営内容が悪いのに、人を押しのけて出たがる経営者。難しい時代だから 自分以外のものには任せられないと地位にしがみつくものなど、現状認識を忘れ、判断できない指導者も中にはいる。
金融ばかりでなく政治やスポーツなど、どんな分野でも、名指導者は、トップについたとたん、 いかに引退するかを常に考えるという。
過去の価値判断が通用しない時代。
余力を残しながら、いかに次に託すか。株主総会や総代会でのトップの判断が注目されるときでもある。(T)


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