<記者メモ>
9月5日号
「財テク感覚の出資金」
自己資本比率アップのため、ここへきて出資金を増強している金庫は少なくないが、大概は小口が主で、「多くても一人100万円まで」などと取り決めを設けている。
だが、中には、またぞろ、「財テク」商品として高額の出資金をかき集めている金庫があるようだ。
首都圏の○○信金では、先般、ある富裕層の顧客が、「1000万円をお宅に出資金として預けたい」と言ってきた。
その顧客によると、近くの某信金から、「出資金を100万円出しませんか。
配当率が○%も付きますよ」と、預金商品の如く出資を勧められたという。顧客は「ならば、大きく預けた方が儲かる」と、ドンと「1000万円」出資する気になった。完全に「財テク」感覚の頭である。
○○信金では大口の出資金は扱わないことを説明したところ、その顧客は「ならば、お宅との取り引きは一切止める」とねじこんできた。それでも同金庫が断ると、顧客は他の金融機関へ流れていった。
「仕方ないですね」と、同金庫はアッサリしたもの。
「小口」が貫けるのも、もともと出資金以外の自己資本が多いからであろう。
逆に、自己資本を増やすために出資金を「財テク商品」として大口でかき集めた金庫は、「配当が○%付きますヨ」と勧誘した手前、経営内容が落ちてきても配当率を下げるに下げられなくなる。やむを得ず下げれば、出資金は流出するだろう。富裕層は足が速い。メリットがないと思えば潮が引くようにサーッと離れていく。
そもそも自己資本のための出資金増強は、劣後ローンと同じ。むしろ出資金は劣後ローンより“金利”が高い場合があり、経営圧迫度はより大きい。
出資金に偏らない自己資本形成、小口中心の地道なファン(出資者)作りが、健全経営の要諦であろう。

読みもの バックナンバー 出版のご案内